ダイムラー・クライスラー日本は2004年10月26日、新型スポーツカー「メルセデス・ベンツ SLR マクラーレン」の販売を開始した。車両本体価格は5775万円(消費税込み)。生産・供給体制が限られ、専門的サービス体制が必要であるとして、同社による受注販売となる。
“SLR”といえば、グランプリマシンのW196をベースにガルウイングの初代300SL風のボディを被せたレーシングスポーツカーで、1955年のタルガフローリオをはじめとするロードレースを席巻した当時最強のレーシングマシンでもあった。
1955年に登場したSLRはその破竹の勢いのままルマン24時間にも参戦するが、そこで300SLRはモータースポーツ史に残る大事故を起し、それをキッカケにメルセデスのモータースポーツ活動は長い休止時代を迎えることになったのはご存知のとおり。……と、メルセデスにとっての“SLR”という記号はその歴史的価値において、たとえば日産にとってのGT-Rと同等、いやそれ以上に神聖なものということができる。
そんな神聖なSLRの名を、実に約50年ぶりに復活させたスーパーカーがこのSLRマクラーレンなのである。そのサブネームから分かるように、その開発と生産は当初からのアナウンスどおりに今やダイムラークライスラーの子会社となったマクラーレンが担当する。マクラーレンといえばF1グランプリでの活動はもちろんのこと、クルマ好きなら90年代に少量生産されたスーパーカー「マクラーレンF1」を思い出す人もいるだろう。天才ゴードン・マーレイが設計して量産車としては初となったカーボンコンポジットボディを採用、そしてBMW製の6.0リッターV12を搭載したマクラーレンF1は、その実測値としては現在も市販車世界一の座を守っている。
F1で協力している英McLaren Cars社と共同で開発したもので、英国の専用工場で生産する。排気量5.5Lのスーパーチャージャ付きV型8気筒エンジンは、フロントミッドシップに搭載した。最高出力は460kW(626PS)、最大トルクが780N・m。このエンジンはMercedes AMG社が同車専用に開発し、すべて手作業で製造するという。