超磁歪アクチュエーターという磁気でミクロン単位で伸び縮みする装置をアンプに接続。この部品は元々1t以上の重い物を精密に動かすための部品とか。ただし万単位するらしいです・・・棚や壁につけると大音響のスピーカーに!!こりゃすごい!
皆さん、音は耳で聴くものだと思ってはいませんか? 私だってそう思っていました。しかし、あるものを落語会の打ち上げで友人から見せてもらって、その認識を改めました。彼はまずヘッドホン状の片方、本来なら耳につけるべきものを、目の前のテーブルにピタッとくっつけました。 おいおい、なにやってんの? ところが次の瞬間、テーブルから音楽が鳴り出したのだから驚きました。 こんなヘッドホン、初めて…と言うより、もはやヘッドホンではない、これは。 彼は言いました。 「これは磁歪(じわい)の技術によって開発された『フィル・チューン』 (ヘッドホンタイプの皆伝導機器)というもので、骨伝導で音を伝える機器なんです」 要するに、鼓膜で聴くのではなく骨で聴く。 ふだん、私たちは実はそういう聴き方もしてるらしいのです。 田舎に行って山全体からくるなんとはなしの音、流れる川の音、こういうのは鼓膜で聴いているだけではないのですね。 鼓膜で聴く音は左脳を使い、骨伝導で聴く音は右脳を使うそうです。 磁歪の技術とは、人間が音として感知しない周波数の音域までを発生させる技術、すなわち、素子そのものを金属を伸縮させて変化させる技術、その結果できたものを超磁歪素子と呼ぶとのこと。 こういう話を聞くと、音の世界は私たちが認識しているよりずっと豊かなものらしいです。この技術を利用すると、鼓膜障害による難聴の人は、この機器をつけることによって音が聴けるようになります。 残念ながら、耳の神経を失った方は、無理なそうですが。 健常者にとっての応用としては、たとえば外国語。耳だけでは聞き取れなかった微妙な子音の揺れが把握できるために、正確な発音の習得が容易になります。 実際に、発音しにくい中国語の発声が上手にできるようになったという実験結果もあるそうです。機器を研究した会社社長は、そもそも音をスピーカーから聴いてるということ自体に違和感があると言います。 ホールで、2カ所のスピーカーから流れてくる音だけを聴かされてるお客さんはかわいそう、とまで。だって、自然の音は各方向からたえず流れてきてるでしょう?と。 超磁歪素子を使って音響設計したホールができれば、ドラマチックな会場になりますよ。こうなると落語会会場においても、座席によって聞こえやすかったり聞こえづらかったりという不公平もなくなり、声がすぐ近くの璧から臨場感たっぷりに迫ってきますよ。そして、こんな技術を推し進めれば、視覚障害の人も目ではなく皮膚で見た映像が脳にそのまま伝わるとかそういうことが可能になるかも…。
■立川志の輔 新しい音の世界 ■TDK 重くても高速で動かせる超磁歪材料