ノルウェーの代表的画家ムンク(1863−1944年)の絵画「叫び」や「マドンナ」などが22日、オスロのムンク美術館から強奪された。「叫び」は1893年の代表作。
現場に居合わせたフランスのラジオプロデューサーによると、美術館の見物客の前で武装した犯人グループが美術館のスタッフを脅した上で、盗み出したという。
美術専門家によると、「叫び」は6000万―7500万ドル(約66億―82億5000万円)の価値がある。美術館関係者は「有名すぎて売れないため、犯人は金を要求してくるのでは」と見ている。
このプロデューサーによると、同美術館には絵画盗難を防止する装置も警報ベルもなく、絵画は金属線で壁に掛けられていただけだという。
<b>エドヴァルド・ムンク(Edvard Munch, 1863年12月12日 - 1944年1月23日)
19世紀〜20世紀のノルウェー出身の画家。『叫び』の作者として有名で、ノルウェーでは国民的な画家である。生と死の問題、そして、人間存在の根幹に存在する、孤独、嫉妬、不安などを見つめ、人物画に表現した。表現主義的な作風の画家として知られる。
「生のフリーズ」と『叫び』
1890年代に制作した『叫び』、『接吻』、『吸血鬼』、『マドンナ』、『灰』などの一連の作品を、ムンクは「フリーズ・オブ・ライフ」と称し、連作と位置付けている。
「フリーズ」とは、西洋の古典様式建築の柱列の上方にある横長の帯状装飾部分のことで、ここでは「シリーズ」に近い意味で使われている。
これらの作品に共通するテーマは「愛」「死」そして愛と死がもたらす「不安」である。ムンクの代名詞ともなっている『叫び』は、その遠近法を強調した構図、血のような空の色、フィヨルドの不気味な形、極度にデフォルメされた人物など、独創的で秀逸な作品である。ただ、あまりにも広く紹介されており、構図をまねたパロディなど、戯画的な扱いをされがちでもある。
ムンクは、ある日、フィヨルドの近くを歩いている時に「自然をつらぬく、けたたましい、終わりのない叫びを聞いた」と言っており、その経験を絵画化したものである。自己の個人的体験に基づく「愛」「死」「不安」を芸術表現に昇華し、世紀末の人々の孤独や不安を表現したことがムンクが高く評価されるゆえんである。
ムンクの「叫び」強奪事件で6人を告発
ノルウェーの検察当局者が19日明らかにしたところによると、昨年8月にオスロの美術館からエドバルト・ムンク(1863−1944)の傑作「叫び」と「マドンナ」が大胆にも白昼、武装の2人組に強奪された事件に関与した容疑で6人が告発された。同当局者によれば、5人は重窃盗、1人は盗品売買の容疑がかかっている。事件には組織犯罪が関係している疑いが強まっている。
2人の強盗はムンク美術館に乱入、入館者たちが呆然と見守る中、職員を銃で脅して絵を奪い、共犯が運転する車で逃げ去った。告発された6人のうち3人は収監されている。2つの絵画は合計1億ドル(約116億円)の価値があるとされるが、まだ見つかっていない。ムンクは2つの絵画について幾つかの版を制作している。
検察当局者はこれら絵画の所在探索が進んでいないことを認めた。
盗まれたムンクの「叫び」、2年ぶりに発見
2004年にオスロのムンク美術館から奪われた画家ムンクの代表作「叫び」と「マドンナ」が31日、およそ2年ぶりに警察によって回収された。
両作品は現在、当局が保管しており、損傷度は予想以上に小さいという。警察は、回収方法については明らかにしなかったが、「きょうの時点で」金銭の支払いは行われていない、と述べた。
2004年8月、武装した覆面姿の2人がムンク美術館を襲撃し、白昼に堂々と鑑賞者らの前でこの2点を盗んで行った。今年5月に容疑者3人が最大8年の禁固刑、うち2名が損害賠償1億2200万ドルの支払い命令を受けた。