アニメの名作「宇宙戦艦ヤマト」が約20年ぶりに復活する。83年までに4作品が劇場公開され、計1000万人以上を動員。第1次アニメブームの火付け役ともなった。新作は、西暦2222年に滅亡の危機に瀕(ひん)した地球を救うため、ヤマトが復活する――という設定。今月、制作が正式に決まり、原画制作が始まった。06年夏に劇場公開の予定だ。
宇宙戦艦ヤマトは74年にテレビ放映された後、77年に劇場公開されて230万人を動員する大ヒットとなった。翌78年公開の続編「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」は爆発的なブームとなり、400万人が映画館に足を運んだ。
新作は「宇宙戦艦ヤマト 復活編」(仮称)。原作は1作目から製作に携わってきた西崎義展氏。プロデューサーには映画「リング/らせん」のプロデュースを始め、カンヌ映画祭など国際映画祭で数多く受賞している仙頭武則氏。
基本構想では、時代設定が前作から約20年たった西暦2222年。宇宙を移動するブラックホールが半年後には地球をのみ込むことが分かり、全人類が2万7000光年離れた星に移住することを決定。移民船団がその星に向かう途中、一帯の惑星を植民地支配する大国の軍隊から攻撃を受け、ヤマトが反撃をする――という内容だ。
主役はヤマト艦長の古代進。前作では古代の恋人だった森ユキは古代と結婚し、娘の雪が登場する。脚本は今年秋ごろに完成の予定。
公開予定は06年夏で、全国400館規模で上映する計画だ。テレビ放映も予定しているという。制作費は約25億円。
ヤマト“ブラックホール”突入?映画復活の波紋
ヤマトの航路に再び暗黒星雲!? 再来年夏に新作が劇場公開されることが決まったアニメの名作「宇宙戦艦ヤマト」の復活が波紋を広げている。今回の復活は、原作者の漫画家・松本零士氏と前作の西崎義展プロデューサー=銃刀法違反で服役中=との著作者をめぐるバトルが一応の和解したことで、西崎氏側が“発進”を決めた。だが、松本氏はもちろん、映画の著作権を保有している映像会社の東北新社も了解していないことが判明。話は壮大ながら、難しいかじ取りを迫られているのだが…。
「従来のヤマトとは似て非なるもの。森ユキは死んで出てきませんが、娘が登場します。新しいキャラクターもたくさんいる」こう話すのは、「新・宇宙戦艦ヤマト 復活編」を製作するエナジオ(東京都港区北青山)の西崎彰司エグゼクティブ・プロデューサー。
彰司氏は、西崎プロデューサーの養子。西崎受刑者は以前に「宇宙戦艦ヤマト復活編」と題し、基本構成を作成しており、「新…」はこれを元にしたという。
舞台は西暦2222年。半年後、地球が滝状の移動ブラックホールに呑み込まれることが判明。全人類が2万7000光年離れた惑星に移住を決意する。移民船団が付近の惑星を支配する星から攻撃を受け、古代進艦長率いるヤマトが戦う−というストーリー。
映画は25億円の製作費で、再来年夏に約400館で公開、テレビ放映もするという。配給会社やテレビ局は未定だが、「候補はいくつかあがっている」(彰司氏)。
脚本は「名の通った人」を含め数人の脚本家に依頼中。「ハリウッドにも頼んでいる」といい、原作者の松本氏についても、彰司氏は「何らかの形で参加する」と話す。
ところが当の松本氏は「何も知りません」というのだ。
松本氏と西崎受刑者といえば、アニメのヤマトの著作者をめぐり対立し、裁判に発展。昨年、双方が訴えを取り下げ和解。西崎受刑者は映画を製作、松本氏は総設定、デザイン、美術などに著作権をもつ共同著作者とする和解書を交わした。
今回の「復活編」は、和解書の中で「それぞれ別途に(ヤマトに関する映画を)製作し公開する予定であることを確認する」としたのを根拠に、「和解を受けて製作を決めた」と彰司氏。
松本氏も「映画を“作る”ことは自由」と認めたうえで、「絵画の著作権は私にあり、キャラクターも私が生み出した。新しい映画には『絵画・美術は松本』と明記しなければならない。それに移動性ブラックホールを持ち出したのは私の発想。私を抜きでは作れない」と異議を唱える。
また、松本氏以上に困惑を隠せないのが、東北新社。同社は8年、西崎受刑者から「ヤマト」の著作権を譲り受け、著作権登録も行っている。
今回の件について、同社広報室は「先方との話し合いに入ったところだが、クリアしなければならない点が少なからずあり、そういう意味で現時点では許諾していない」と説明する。
また、ある映画関係者は、この構想そのものに首を傾げる。「昔は、何も決まっていなくても話をブチ上げて資金を集めるということもあったが、今はそんなことは不可能。400館も公開できる配給会社はないし、アニメは通常、何年もかけて製作する。公開まで2年とは、実写でもそれくらいかかるのにできるのか」。
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