プッシュトゥトーク(PTT)とは、携帯電話網をIP化して、音声もデータもIPパケットで送るシステム「オールIP」の開発が水面下で急速に進んでいる。日本では、NTTドコモが複数メーカーからの提案を受け付けており、近いうちにメーカーを選定する段階まで来ている。欧米では、多数の事業者がオールIPシステムの調達に当たって要求仕様を提示し始めた。 仕掛けているのは、国内外の大手通信機器メーカーだ。スウェーデンのエリクソン、独シーメンス、米モトローラなどが2003年から2004年にかけて、オールIPシステムを発表、順次商用化している。日本でもNECが2004年後半に発売する。
携帯でVoIPによるサービス開始 第3世代携帯電話のオールIP用システム「IMS」 3Gの標準化団体「3GPP」が2003年に仕様を策定した。3Gのパケット通信ネットワークに追加することで,SIPを利用したさまざまなインターネット・アプリケーションを実現できる。 オールIPシステムの主流となりそうなのは、第3世代携帯電話の標準化団体「3GPP」(The 3rd Generation Partnership Project)が2001年12月に規定したシステム規格「IP Multimedia Subsystem」(IMS)に準拠したもの。W-CDMA方式による3Gシステムのパケット通信ネットワークを利用して、VoIPによる音声通話サービスを実現するためのプラットホームである。 IMS商用化への取り組みがここにきて本格化してきたのは、音声の一斉同報サービス「Push-to-Talk」(PTT)が米国で人気を集めたことにある。米大手携帯電話事業者のネクステル・コミュニケーションズが96年に始めた。 トランシーバのように、話すときに通話ボタンを押して会話するサービス。通信料を定額にしたにもかかわらず、現在のARPU(1契約者当たりの平均月間収入)は、米携帯電話事業者の平均と比べて1000〜2000円高いという。 これに続けとばかり、米ベライゾン・ワイヤレスが2003年8月、米スプリントPCSが11月に「Push-to-Talk over Cellular」(PoC)の名称で参入。欧州でも、英オレンジが2004年2月に同様のサービスを開始した。 米国に限らず欧州や日本でも、携帯電話事業者は利用が少ないライト・ユーザーの増加や通話料の値下げの影響で、音声ARPUの減少に悩まされている。新しいアプリケーションを導入してデータ通信利用を促し、通信料収入全体を底上げする必要がある。 そこでPTTに期待する携帯電話事業者と、IMSを売り込みたいメーカーの思惑が一致。PTTのプラットホームとしてIMSの採用に動いている。