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May 2, 2004 space
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イノセンス / INNOCENCE

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 すさまじい映像と音響――。そして奥深いストーリーが展開する映画『イノセンス』。アニメーション映画として究極の域に達したこの作品。各場面には押井守監督が仕掛けた「謎」や「秘密」が隠されている。

映像の美しさはさすがですが、シナリオは私には微妙な感じでした。

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 3月6日に公開された映画『イノセンス』。この映画を見た多くの人たちが、映像、音響の凄さに圧倒され、日本のアニメーション技術が世界の頂点に立つことを改めて理解したことだろう。一方で、映画のセリフで引用されるさまざまな“言葉”に翻弄されて、この映画を“難しい”と評する人もいる。
 
物語は、人々が電脳化された近未来。少女型の愛玩用ロボットが暴走し、人間を殺傷するという事件が頻発する。それを捜査する公安9課の刑事バトーは、自らの脳にハッキングを受けるという妨害を受けながらも、真実に近づいて行く…。1995年に公開された『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』の直接的な続編であり、押井守監督のアニメ作品としても9年ぶりとなる、全世界待望の1作だ。前作の主人公、草薙素子ももちろん“登場”する。
 
美麗なCGで彩られる画面の情報量も、サスペンス調の本筋を時に逸脱して語られる“禅問答”の量も、前作を遥かに凌駕。躊躇なく難解な一方で、バトーという寡黙なサイボーグに感情移入しやすい味付けがなされているのが今作のミソだ。そうして描かれる“未来”は、機械とネットに支配されながらもこの上なくウェット。それこそが、前作が提示した“人間とは、魂とは何か”という問いへの渾身の回答なのだろう。
 
確かに、この作品はハリウッドのアクション映画のように単純な物語ではない。実は『イノセンス』に限らず、押井守監督作品には、常にいくつものテーマや暗示、引用といったものが埋め込まれており、その混沌としたところが魅力になっている。
 
従って、同じ映画であっても、見方を変えると全く異なる印象になる。それが押井作品の面白さでもある。つまり『イノセンス』の中でも描かれているように「目の前に見えているものが、必ずしも真実であるとは限らない」のである。
 
中で描かれる二つの異なる物語
ストーリーとして描かれるのは、猟奇的な殺人事件の真相を追いかける二人の刑事の物語である。だが、それと並行して、人間にとって「人形」とはどんな意味を持っているのか――を探求する物語も描かれているのである。
 
前者の物語は、事件→捜査→手がかり→真相というプロセスを経る。これは見ての通りで、いわゆるオーソドックスなコンビ刑事ドラマのパターンが踏襲されている。ちなみに、押井監督が公開前のインタビューで、今回の映画は“バディムービー(相棒映画:例)『リーサル・ウェポン』)”である云々という話をしているのは、この部分だ。
 
一方、後者の物語は、仮説→検証→証明というプロセスを経ている。この場合の「仮説」は、検死官のハラウェイが劇中で語っている通り。“子育ては人造人間をつくるという古来の夢を一番手っ取り早く実現する方法だった”云々である。
 
主人公のバトーは自宅で飼い犬のバセットに触れる一方、択捉(えとろふ)の祭りやキムの館、そしてプラント船での体験を経て、その仮説をさまざまな角度から「検証」していく。そして物語の最後で、娘を抱きかかえる相棒のトグサと、トグサの娘が抱きかかえる人形、そして自らが抱きかかえるバセットを見るにあたって、それが「証明」されたことを知る。
 
映画は、この両方を同時に描いている。また、それに加えて登場人物たちの語る哲学的なセリフ、古典文学からの引用などが数多くなされている。それは映画を一見すると複雑にしているが、その一方で映画を豊かなものにしている。それこそが押井監督の狙いなのだ。そうしたセリフは映画を彩る一種の“背景”のようなものであり、観客はその言葉をすべて理解しなくても、ストーリーの把握に支障は全くない。楽しみ方の秘訣としては、最も生身の人間に近いトグサの視点で作品を見れば、“すっ”と映画の中に入っていけるだろう。
 
し見ることで面白さが変わってくる
 
1度見ただけではわからなかったものでも、2度3度と見るうちにわかってくる。また1度目に見たときと2度目に見たときでは、異なるものが見えてくる。それが『イノセンス』という映画なのである。最低でも2度見ることをお勧めする。
 
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